百年越しの初恋の君1※BL※一部性的表現アリ

 記念すべき私の百回目の誕生日、君は言った。


 『来年こそは好きな者と祝わないとな』と。


 その発言に、私の口のみならず拳までも抗議に出ようとしたが、理性の手綱に強く引かれ何とか踏みとどまった。


 来年こそ?

 好きな者?


 …それでは今までの誕生日は何だったんだ。


 今まで君と過ごした百回の誕生日に何と説明をつける気なんだ!

 私は間違いなく百回とも好きな者としか過ごした憶えはないぞ!!


 そうだ。


 生まれてから今日この日まで、好きになったのはたった一人だ。


 無神経な祝詞を投げて寄越した、君だけ…だ。



 そこんとこわかってるのかクソジジィ!!

 


 セックスとは、動物的本能に基づく堕落した運動にも及ばぬ行為である。


 そんな風潮が高まってか、年々『新人類』の寿命が伸びるのに反比例して、出生率は最悪まで落ち込んで行った。

 ここ百年、人口は緩やかな下降線を辿る一途だ。

 政治家達も表面上は政策を打ち出してはいるが、肝心の国民の関心が薄いせいか、今一真剣味に欠ける。


 当然と言えば当然だ。


 『子孫繁栄は我々の未来を確かで安寧なものにする為の最重要課題です!皆さん、輝ける明日の為に家族を増やし賑やかな家庭を作って行きましょう!!』


 つまりは、


 『子供を作れ、セックスをしまくれ』という事なのだから。


 そりゃどれだけ国会で議論しようが、出馬する候補者がマニフェストに掲げようが、世論の賛同を得られる訳がない。


 セックスに価値と快楽を見出していた、『ニンゲン』と我々は違う。

 この時代に生きる人間は、高いプライドで出来た新しい生命体なのだ。


 恋愛とは、肉体ではなく精神の交わりで喜びを分かつものである。


 なんて。


 本当は皆、ヤりたくてムラムラしてる筈なのにね。


 特に私みたいな、精神的失恋しちゃってる奴はさ。

 


つづく


夕餉の君のミラーの話です。長くなりますがよろしくお願いします( •̀ㅁ•́;)