海ゆかば

『国家存亡のとき、学生もペンを捨てて入隊せよ』


 大東亜戦争激化に伴う極度の兵力不足。


 政府はこれに対処すべく、上記スローガンの下、在学徴収延期臨時特例を交付した。


 これにより徴兵猶予は停止され、理工科・医学・教員養成系学生を除く、大学・高等専門学校の学徒は、出陣を余儀なくされたのだった。




 ――1943年の事である。




 出征前、日本軍を舵取る東條英樹首相列席の下執り行われた、出陣学徒壮行会。

 秋雨降りしきる中、何万もの学徒一丸となり声を重ねた軍歌――海ゆかば。







 海ゆかば 水漬く屍

(海を行くなら、水に漬かる屍ともなろう)


 山ゆかば 草生す屍

(山を行くなら、草の生える屍ともなろう)


 大君の辺にこそ死なめ

(天皇が為に、この命を投げ出して悔いはないのだ)


 かへりみはせじ

(顧みず最後まで天皇を守り死のう)


 歌を噛み締めながら、伊神は友の温もりを思い出していた。







 海ゆかば、君が為。


「かえりみはせじ」


 呟き、伊神は莞爾と笑った。





平和な時代な筈なのに…

未だに命が選別される…(´;ω;`)

きついな…

子供達も修学旅行で見聞を広めたりも制限されるし…

ペンは奪われつつある…