子役×落ち目アラサーアイドル(百合小説)

 ある日の収録日の楽屋。


 いや、ある日と言っても、私にとっては3ヶ月ぶりの久々の仕事。


 例えその仕事が、子供番組であろうとも、マネージャーがやっととってきた国営番組の仕事。

 私は全力投球するつもりだった。



 ――だかしかし。



「ちょっとオバサン!さっきのカットは、マリンさんが主役なんだから出しゃばんないでよ!」


「そーよそーよ!マリンさんの前に立つなんて、10年早いわよ」


「ななな、何ですってえ!?」


 こんな小生意気なお子様達と一緒に、にっこり笑顔で共演なんて出来るわけない。


 私を誰と存じているのだ。


 確かに最近は、見る目がない前衛姿勢の番組制作者が増えたせいで、メディアに姿をあまり見せないでいるが、私は一世風靡した大女優なのだ。


 こんな小学生の小娘どもにとやかく言われる覚えは…


「やめなよ二人とも。大先輩に失礼なことを言っちゃ駄目」


 私の怒りが爆発しかけたまさにその時、一人の少女が爽やかに現れた。



 ――最上茉菻(もがみまりん)。


 一昔前の私と同じように、今をときめく子役兼スーパーアイドルだ。




 ―――いや、それだけではない。


「すみませんレイコさん。ほら、みんな待ってるから、二人ともリハに行こう」


「は~い…」


「あ、そうだレイコさん」


 二人を促し先を歩かせると、マリンはゆっくりと優雅に振り向いた。




「――私より目立ったお仕置き、楽しみにしておいてくださいね?」



 そう言って悪魔――もとい私の恋人は、至極爽やかに楽屋を後にした。



end


小悪魔な小学生好きだな…!